問2.日々我れ

すきなことをかく

第7回短歌の目・9月 感想5首

tankanome.hateblo.jp

短歌の目の感想書こうと思ったのだけど、見事にウーパールーパーの歌ばっかり引用ストックされてる。

今回はそこからさらにしぼって5首選でいきます。前回の10首はさすがにきつかったので。

かなしみの有声反り舌摩擦音美しき「日本(riben)」容易くはなく

短歌の目に参加します。 - つのへび日記

ゆうせいそりじたまさつおん、をこんなに美しく詠める歌もそうそうないのではないかと思いました。(個人的にこういう学術・専門用語系はめっちゃ好きです)
中国在住という背景を抜きにしても、かなしみ・日本(りーべん)・容易くない、と発音から母国との距離的なへだたり、そして日中の国交関係まで飛べる歌だと思います。

4句目の「美しき」は初めうつくしの連用形+過去の助動詞きでとったので、句跨がりの切れた部分で日中の隔たりが強調されているのだととったのですが、読み返してみると「有声反り舌摩擦音(の発音が)美しき(単語である)日本(の発音は)容易くはなく」という日本にかかるうつくしの連体形「うつくしき」ともとれるのかなと思いました。ただそうすると「かなしみの」がちょっと浮いちゃうような気もする。りーべんの発音自体はどちらかというともの悲しい感じなのでまとまってはいると思うのですが。

いつも夜ベランダにいて月ばかり写真撮ってる(帰りたいのか?)

はてな題詠「短歌の目」9月 - Letter from Kyoto

確かに現代にこそかぐや姫いっぱいいそう。でもなぜかこの歌を読んだとき写真撮ってるのは男の人のイメージだった。スマホで月の写真撮るのって形ぼやけちゃって難しいのに「いつも」わざわざ「ベランダ」に出て撮るその何気ない行為に隠されたなにかしらの執着心がバーレンにつながっていて、場面がきれいに気持ちへスライドしていく歌だと思いました。バーレンって現代短歌ぽいって使うと安易になりがちだけど、この歌では効いてると思います。

きみの飼うウーパールーパーみたいに可愛がるから。かわいがるから。

「短歌の目」9月 投稿します - 乳飲子を小脇に抱えて

 こわい!結句のリフレインをわざわざひらがなで開いているところはもちろん、ウーパールーパーに対する愛情のかけ方というのも、得体が知れないです。しかも作中主体は相手(きみ)に対する愛情を相手(きみ)が実際にやっているようなかけ方でかける、そういう相手に注がれてきた異様な視線もこわい。

ツーシーム月のざらめに指をかけ投げるうさぎはゲージの中に

フィボナッチ短歌 - マトリョーシカ的日常

ツーシームで野球ボールを想像した途端、月が出てきてそれを投げるうさぎがケージ(ゲージってなっていますがcageだからケージじゃないかと思います)の中に、というミクロからマクロいってミクロなつながりをしていて面白いです。
あとは月の「ざらめ」というのがあのクレーターの凹凸感の表現になるのでしょうか、しっくりきます。
気になるのは結句が「ゲージの中に」と言いさしになっているところで、中にいるのか中に入るのかイメージがはっきりしないので、視点の行き来が多く展開が早い分、最後も明確にしてもよかったんじゃないかと思いました。

唐揚げにレモンかけるかかけないかそれが問題ウーパールーパー

たんたん短歌 短歌の目/9月 - 片鱗カフェ

 リズムがめっちゃ好きです。ウーパールーパーは全然文脈から引き出されないはずなんだけど、唐揚げにレモンかけるか問題っていう違うスタンスだとすごくイラッとしてしまう事案を、あんまなんも考えてなさそうだけどとりあえず話を遮らずに聞いてくれそうなウーパールーパーっていう生き物に投げるこの微妙さがテンポのよさによってすごくあっけらかんとしてスカッとした歌になっていると思いました。
穂村弘の有名作「サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい*1」ぽい側面があると思います。

 

以上でした。
これ以外にも言及したかった歌があるのですが、書けそうだったらまた書きます。

*1:

シンジケート

シンジケート

 

に収録

atuihiga tudukanakutemo okaradani okiotukete chihoutosiyori (c)Imada_Natsuki